「年金制度に加入できる(保険料・掛金を支払える)年齢の上限」と「年金の受け取り開始時期を遅らせられる年齢の上限」の変更が検討されています。
今回、現時点で私が観測している情報を要約して紹介します。
このテーマは、今後、国会審議に向けて徐々に報道が増えるでしょう。
現在、厚生労働省において、下の3つの表の「赤い字のセルの期間(年齢)の『追加』」が検討されています(厚生労働省が作成した表を加工しました)。
それぞれ、どの制度に、どういう年齢の追加が検討されているのか、見ていきましょう。
1. 公的年金(「国民年金」と「厚生年金」)
20~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|
国民年金 の被保険者 である年齢 |
◎ (第1~3号) |
▲ (第2号 or 任意加入) |
- | - |
厚生年金 の被保険者 である年齢 |
◎ (第2号) |
◎ (同左) |
◎ (同左) |
- |
受け取り 開始年齢 [原則65歳] |
- | ◎ 60歳まで 繰り上げ可 【減額】 |
◎ 66歳以後に 繰り下げ可 【増額】 |
◎ 70歳以後も 繰り下げ可 【増額】 |
2. 私的年金のうち「確定給付企業年金(DB)」
20~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|
加入できる 年齢(規約 に規定) |
◎ (厚生年金 被保険者) |
◎ (同左) |
◎ (同左) |
- |
受け取り 開始年齢 (規約に 規定) |
- | ◎ | ◎ | - |
3. 私的年金のうち「確定拠出年金(DC)」
20~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|
企業型に |
◎ (厚生年金 被保険者) |
◎ (同左) |
◎ (同左) |
- |
個人型に 加入できる 年齢(規約 に規定) |
◎ | ▲ (国民年金 被保険者) |
- | - |
受け取り 開始年齢 (規約に 規定) |
- | ◎ | ◎ | ◎ |
4. まとめ
上記に要約した厚生労働省の検討は、「成長戦略ロードマップ(2019/6/21閣議決定)」などを受けたものです(以下、「成長戦略ロードマップ」の見出しを転載)。
Ⅱ. 全世代型社会保障への改革
1. 70歳までの就業機会確保
(2) 新たに講ずべき具体的施策
ii) 働き方の多様化や高齢期の長期化・就労拡大に伴う年金制度の見直し
「より長く、多様な形となる就労の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤を充実させる」ことが基本的な考え方、とのことです。
現時点で観測している検討内容について、私に反対意見はありません。
この制度変更で「損する人」は、いま考える限り、いないと思います。
では、「恩恵を受ける人」はどういう人なのか?
次のいずれか、または両方に該当する人でしょう。
- 公的年金の受け取り開始を70歳以後に遅らせても(繰り下げても)、繰り下げ期間中、生活に困らない人
- 70歳まで(できるだけ長く)民間企業に雇われたい人、かつ、雇われうる人
のうち、
「企業型DCを導入済みであり、従業員が70歳になるまで加入できるよう、企業型DC規約を変更するであろう民間企業」に雇われている人、または、「従業員が70歳になるまで加入できる規約の企業型DCをこれから導入するであろう民間企業」に雇われている人、
かつ、現にその企業型DCに加入している人、または、これから加入できるであろう人
公的年金(と私的年金の一部)は、亡くなるまで受け取れる終身年金です。
終身年金の額を増やす選択肢が広がるということは、(選択できる人にとっては)「想定以上の長生きによる老後資金枯渇リスク」を減らすことができますね。