前回、「非常用資金(失業や被災など、非常時・緊急時に備える資金)」の置き場所として、
(1) ゆうちょ銀行に20万円貯金 + それ以外はお好きに
(2) こだわらない(全額お好きに)
の2つの結論を書きました。
ゆうちょ銀行に20万円置くか置かないかの違いでしたので、今後、金融資産全体を考える場面では、この違いは無視することにします。
さて、今回のテーマは、
- 「非常用資金」と「使用予定資金(10年以内に使う予定がある資金)」は、安全資産への投資に限って投資に回してもかまわないか?
です。
なお、このブログにおける安全資産とは、「円建ての価格が変動しない金融商品」または「現金(円貨)」と定義します。
反対に、「円建ての価格が変動する金融商品」のことをリスク資産と呼ぶことにします。
安全資産 | 現金(円貨), 預金(円建て), 個人向け国債など |
リスク資産 | 預金(外貨建て), 株式, 債券(個人向け国債を除く), 投資信託, ETF, 先物, FX, 金(Gold)など |
金融商品とはいえ「預金(円建て)」を投資対象と考えることには違和感があると思いますので、投資対象になりうる安全資産の具体例としては「個人向け国債」を想定します。
個人向け国債については、以前、書きました。
また、今回のテーマは、
- 管理・分析するポートフォリオに安全資産を含めるか? 含めないか?
という論点にも関連しますので、これについても書いてみました。
1. 「非常用資金, 使用予定資金」で個人向け国債を買ってもよい?
(1) 非常用資金
文字どおり「非常用」として、たとえば予期せぬ失業による求職期間中の生活費に充てたり、大規模災害被災後の生活を立て直したりするための資金です。
数ヶ月分の生活費は、「生活資金」として預金で確保済みという前提です。
この前提であれば、「非常用資金」を取り崩す必要が生じたとき、実際に使えるようになるまでに多少の日にちがかかっても、問題にはならないはずです。
このように考えれば、「非常用資金」で個人向け国債を買っても大丈夫ですね。
ただし、個人向け国債は購入後1年間は解約(換金)できませんので、いきなり全額で買わず、2回以上に分け、かつ、1年以上間隔をあけて買うようにしましょう。
もちろん、預金のままでもまったく問題ありません(足元の金利水準では、個人向け国債を買っても利息はスズメの涙です...)。
(2) 使用予定資金
「使用予定資金」は「10年以内に使う予定がある資金」という位置づけです。
ということは、個人向け国債は購入後1年間解約できない点のみ注意し、「1年以内に使う分を除いた使用予定資金」で個人向け国債を買っても大丈夫ですね。
もちろんこちらも、預金のままでもまったく問題ありません。
2. 「現金, 預金, 個人向け国債」はポートフォリオに含めて管理する?
さて、この論点はどうでしょう?
年金基金の場合、「短期資金(または短期資産)」という資産区分があり、これは個人でいえば「預金」に相当します。
また、生命保険会社が年金基金向けに販売する「一般勘定」という金融商品があり、これは元本と固定利率を生命保険会社が保証し、かつ、年度によっては特別配当もありうるというもので、「個人向け国債」に似ています。
年金基金は、短期資金も一般勘定もポートフォリオに含めて管理・分析しています。
年金基金にならえば、「現金, 預金, 個人向け国債は、ポートフォリオに含めて管理・分析する」ことになります。
ただこれは、そのようにすることを主務官庁(厚生労働省)が年金基金に求めているからであり、個人投資家が自分のポートフォリオをどのように管理するかは言うまでもなく自由です。
- 「現金, 預金, 個人向け国債」をポートフォリオに含めて管理・分析するか?
[リスク資産 + 安全資産 = ポートフォリオ(金融資産残高総額)]
(ポートフォリオ全体の期待リターンとリスクは低くなる) - それとも含めず、リスク資産だけのポートフォリオを管理・分析するか?
[リスク資産(ポートフォリオ)+ 安全資産 = 金融資産残高総額]
(ポートフォリオ全体の期待リターンとリスクは高くなる)
どちらを選んでも金融資産の残高総額はもちろん同じです。
「現金, 預金, 個人向け国債」をポートフォリオに含めるか含めないかについては、自分の感覚や性格に合うほうを選べばよいのではないでしょうか(笑)。
ちなみに私は、いまのところ「含めて」管理・分析しています。
その理由をしいて考えれば、「資産運用のパフォーマンス測定もさることながら、収入・支出・資産・負債の将来予測のほうにより強い関心があるから」といったところでしょうか。