あなたの家計は 100歳まで もちますか?

独立系FP 福嶋淳裕のブログ

ほぼ人生100年世代 の老後資金

<先週から「買い下がり」を実行中です。少額ですが...>

<年内最後の投稿になるかもしれません。よいお年を!>

 

人生100年時代」というフレーズは、この2年で日本社会に定着した感があります。
いま40歳くらいの人の平均寿命は95歳に、20歳くらいの人の平均寿命は100歳になる、などといわれています。
もはや、現役世代の日本人全員を「ほぼ人生100年世代」といってもよいのではないでしょうか。


古来、「長寿、長生き」はおめでたいことです。

しかしながら、日本人の寿命がここまで延びると「健康」と「お金」が問題になってきます(もしかしたら「生きがい」も)。

  • 健やかに長寿を全うできず、誰かの助けがないと生活できない期間が長くなる
  • 想定以上に長生きしてしまい、老後資金が足りなくなる

といった事態を自分や家族に望む人はいないでしょう。

健康寿命, 後見, 介護, リビングウィルなどについては専門外ですので、今回は「ほぼ人生100年世代」の老後資金の確保・形成について、いくつか書きます。
これは普段、私が人様(ひとさま)にレクチャーしている内容の根幹部分でもあります(実際に説明するかどうかは、相手の年齢や金融資産残高などによります... 笑)。


公的年金である「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は、原則65歳から亡くなるまで、国(厚生労働省)から受け取れる、ありがたい終身年金です。

しかしながら、リタイアメントまでにまとまった貯蓄(投資の残高を含む)を用意できなかった場合、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」だけで100歳までの総支出を賄うことは、一般的には難しいでしょう。

特に、ずっと自営業だった方で、まとまった貯蓄を用意できなかった場合、「老齢基礎年金」だけで100歳までの総支出を賄うことは、非常に難しいといえます。
受け取れる年金が老齢基礎年金だけで、貯蓄はほぼなく、他の所得もないリタイアメント世帯は、(半分自給自足のような恵まれた生活環境でない限り)衣食住ギリギリのレベルか、最悪の場合、生活保護を受けることになると思います。
自営業だった父の老齢基礎年金の額を見て、本当にそう思います。

では、どう備えるべきか?


総論としては、

と、

  • 長期的な視点で将来の家計を概算で見通し、
    必要に応じて適宜修正していく姿勢

が求められる、と私は考えています。
特に金融リテラシーは、できれば社会に出る前から身につけ始めたいものです(難しいことではなく、たとえば、「貯蓄グセをつける」とか「リボ払いは絶対に利用しない」など、基本的なことです)。


各論として、もし、あなたが「まだ」であれば是非取り組んでいただきたい3つのことと、60代半ばで意思決定できる1つのことを紹介します。

 

 

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1. 貯蓄

もし、「まだ」であれば最優先で貯蓄に取り組むべきです。

貯蓄するための原資は、収入を増やすか支出を減らすかして確保または増額するしかありません。

しかしながら、すでにフルタイムで働いている人が「毎月の収入を増やす」ことは、自分の意思だけではなかなか実現できません。ハードルはかなり高いでしょう。

一方、「無駄な支出を減らす」ことは自分の意思だけで(決心さえすれば)実現できます。明らかに無駄な支出を減らして、貯蓄の原資を確保・増額しましょう。

会社員であれば、勤務先(健康保険組合労働組合などの関連団体を含む)の福利厚生制度を調べ尽くすことで、貯蓄の原資を容易に生み出せることがあります(この分野は私の得意分野の1つであり、「知らずに損している人」が多いと常々感じています)。


2. 老齢基礎年金・老齢厚生年金「以外」の終身年金

「老齢基礎年金・老齢厚生年金『以外』の終身年金を受け取れる人」と「受け取れない人」では、リタイアメント後、特に人生終盤のキャッシュフロー予測において非常に大きな差が出ます。

  • 職業や勤務先によって利用できる制度が異なるので、ご自身に合う終身年金の作り方を、是非、検討(または受け取れる権利を確認)してください。

(1) 国民年金の第一号被保険者

であれば、「国民年金基金」の「終身年金A型」または「終身年金B型」への加入を検討してください。
DCやNISAと異なり、運用リスクを負うことなく、終身年金を堅実に用意できます。

(2) 勤務先に「確定給付企業年金(DB)」「企業型確定拠出年金(企業型DC)」「リスク分担型企業年金」などの企業年金制度がある会社員

であれば、定年後に受け取れる一時金や年金の予想額とともに、年金の種類を必ず確認しましょう(最重要の確認事項です)。
あなたが受け取れる年金の種類が下の表の一番下、または下から2番目であれば、おめでとうございます! 額にもよりますが、人生終盤のキャッシュフローの安心度はかなり高まることでしょう。

有期年金 一定期間中、本人が生存している限り支給される
保証期間付き
有期年金
一定期間中、本人が生存している限り支給される(保証期間中の本人死亡後は、保証終了までの期間分が遺族に支給される)
確定年金 一定期間中、本人の生死にかかわらず支給される
終身年金 本人が生存している限り支給される
保証期間付き
終身年金
本人が生存している限り支給される(保証期間中の本人死亡後は、保証終了までの期間分が遺族に支給される)

(3) 「個人型確定拠出年金(個人型DC, 愛称 iDeCo)」を始める方

であれば、運営管理機関を選ぶ際の比較検討項目に、終身年金での受け取りが可能かどうかを加えてはいかがでしょうか。

 

3. 投資, 資産形成, 金融資産運用

「相続や贈与を受ける当てはなく、老齢基礎年金・老齢厚生年金、貯蓄、企業年金または退職金を合算しても、100歳までの総支出を賄うためにはまだ足りない(かもしれない)」ということに早めに気づくことができれば、余裕ある時間軸で「投資(資産運用)」を始めることができます。

老後資金形成のための投資は、趣味(ギャンブル, 投機)とは別枠で、合理的に  <*脚注1>  取り組むべきです。 *1

現代(近代)ポートフォリオ理論と税制優遇措置(DC, NISA)の要点を理解し、アセット アロケーション(資産の配分)とアセット ロケーション(資産の置き場所)が適切であれば、人生終盤のキャッシュフローを支える資金を作ることができるはずです(老後資金形成のための投資は、「分散・節税・低コスト投資」と称して人様にレクチャーしている、私の得意分野の1つです)。


4. 老齢基礎年金・老齢厚生年金の額を増やす

「老齢基礎年金や老齢厚生年金は、原則65歳の受取開始をたとえば70歳に遅らせる(繰り下げる  <*脚注2>  )と、年金の額を1.42倍に増やせる」という話を見聞きしたことがあると思います。 *2

「繰り下げ」は、60代半ばで意思決定できる、人生終盤のキャッシュフローを改善する最強の手段です

しかしながら、受取開始までの支出を上記1. 2. 3.および60代の勤労所得などで賄えないと、そもそも選択できません。

また、夫婦の場合、世帯によっては繰り下げないほうがよいケースもあるので注意が必要です。

 

*1:ここで使っている「合理的に」の意味は、世界各国の年金基金の多くが何らかの形で採用している「現代(近代)ポートフォリオ理論(あるいは「平均分散アプローチ」)」に則って、という意味です。

  

*2:繰り下げは70歳が限度ですが、ごく近い将来、「75歳程度まで限度を緩和し、年金の額をさらに増やすことができる」という内容の法改正が予想されています(公的年金私的年金、金融・証券税制などに関する動向の観測は、このブログでときどき取り上げていきます)。