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独立系FP 福嶋淳裕のブログ

年金加入期間が延長される?

2019年4月、年金の「加入期間を延長する」方向の制度変更議論が、立て続けに報道されました。

「加入期間延長」とは、すなわち、「加入可能年齢上限の引き上げ(加入者資格喪失年齢の引き上げ)」であり、つまり、「人によっては、将来受け取れる年金の額が増える」ということです。

この辺でいったん整理しておきます。

ご自身(および配偶者)がどの年金制度に加入しているかをご確認のうえ、お読みください。 

公的年金 基礎年金(国民年金
厚生年金保
私的年金 確定給付企業年金(DB)
企業型 確定拠出年金(企業型DC)
個人型 確定拠出年金(個人型DC=iDeCo

 

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1. 基礎年金(国民年金

  • 加入期間延長に関する議論は観測されていません(現行制度:「原則20歳から59歳まで」かつ「上限480ヶ月」)。

 

2. 厚生年金保

  • 日本経済新聞(2019/4/16)
    「厚生年金加入、70歳以上も ~厚労省、納付義務を検討 受給額上乗せ~」

厚生労働省は厚生年金について、一定額以上の収入などがある場合、70歳以上も加入して保険料の支払いを義務付ける検討に入る。現在は70歳未満としている保険料の納付期間が長くなるため、受給できる年金額は増える。

 

3. 確定給付企業年金(DB)

確定給付型は大企業に多く、加入年齢は70歳までだ。厚労省は会社員の加入する厚生年金の加入年齢を70歳以上に延ばすことを検討している。75歳が有力な延長案だ。確定給付型も75歳まで加入できるようになれば、将来もらえる年金額は増える。

 

4. 確定拠出年金(DC)

厚生労働省確定拠出年金の掛け金を65歳まで払えるようにし、加入手続きも簡素にする方向だ。払い込める期間が長くなれば、老後に受け取る年金が増える。企業型と個人型(イデコ)に分かれており、いずれも加入期間は20~60歳までとなっている。厚労省は企業型と個人型の両方を20~65歳までとする方針だ。

確定拠出型の加入年齢は60歳まで。経団連企業年金連合会全銀協などが足並みをそろえ、引き上げを求めた。根本匠厚労相も引き上げに前向きで、65歳まで加入できるようにする。 

確定拠出年金法の一部改正

加入資格年齢を引き上げ(60歳→65歳)、企業の雇用状況に応じた柔軟な制度運営を可能とする。

第二章 企業型年金
第二節 企業型年金加入者等(第九条―第十八条)

(企業型年金加入者)
第九条 実施事業所に使用される第一号等厚生年金被保険者は、企業型年金加入者とする。ただし、企業型年金規約で六十歳以上六十五歳以下の一定の年齢に達したときに企業型年金加入者の資格を喪失することを定めたときは、六十歳に達した日の前日において当該実施事業所に使用される第一号等厚生年金被保険者であった者で六十歳に達した日以後引き続き当該実施事業所に使用される第一号厚生年金被保険者又は第四号厚生年金被保険者であるもの(当該一定の年齢に達していない者に限る。)のうち六十歳に達した日の前日において当該企業型年金の企業型年金加入者であった者その他政令で定める者についても企業型年金加入者とする。

  • もっとも、実際には、定年を60歳から65歳などに引き上げる旨の労働協約就業規則などの変更を労使で合意できないと実施は困難ですので、企業型DCの加入期間を60歳以上に延長できている会社はそれほど多くないと思われます。 

 

5. 雑感

内閣府高齢社会白書」平成30(2018)年版によれば、

55歳以上の者の就業状況についてみると、男性の場合、就業者の割合は、55~59歳で91.0%、60~64歳で79.1%、65~69歳で54.8%、70~74歳で34.2%、75歳以上で14.0%となっている。

とのことです。
これらには自営業や会社役員などの方も含まれています。
被用者(雇われている人)だけを抜き出すと、次のとおりです。 

55~59歳 71.4%
60~64歳 56.7%
65~69歳 32.2%
70~74歳 16.0%
75歳以上 3.7%

定年を引き上げたり廃止したりする会社も少しずつ増えているようですが、大部分の会社員・公務員は「60歳定年+65歳までの再雇用・再任用(雇用延長、継続雇用)」というルールで雇われています。

年金の加入期間延長に関する議論は、「60歳以降も雇われる人が増えている」という社会の変化に対応するものですので、反対意見は少ないでしょう(人件費の増加や平均年齢の上昇を嫌がる経営者を除いて)。

このまま順調にいけば、近い将来、厚生年金とDBはおそらく75歳までに、DCは(個人型も)65歳までに加入可能年齢が延びると思われます。

もっとも、定年後、「働きたくて働く人」もいれば、「働きたくはないが働かざるを得ない人」もいらっしゃるでしょう。
このあたりについては、あらためて雑文を投稿したいと思います。