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独立系FP 福嶋淳裕のブログ

企業型DCの運用利回り(2019/3)

日本経済新聞社およびその子会社(格付投資情報センター)によると、

「企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者の運用成績(通算利回り)が悪化している」そうです。 

 

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www.nikkei.com

 

加入時から2019年3月末までの「通算利回り(年率)」は1.86%となった。

 

この「通算利回り(年率)」はわかりにくいのですが、説明によれば、「企業型DC加入者の『制度加入来の利回り』を、運営管理機関のうち、調査に協力してくれる4社が自社の分を計算し、4社の数字を単純平均したもの」だそうです。

つまり、単年度の運用成績ではなく、「企業型DC制度全体の、中長期にわたる運用成績を年率で表したもの」という意味のようです。

実は何年か前、格付投資情報センターに計算方法を質問したことがあるのですが、残念ながら満足のいく回答(計算式の開示)は得られませんでした。

「制度加入来の利回り」といっても、調査対象の約400万人、加入者1人ひとりの加入期間は当然異なりますので、まぁ「ご参考」といったところでしょうか。

 

しかしながら、この通算利回りがおおむね実態を表していると仮定すると、あなたがお勤めの会社がDCを導入するときに採用した「想定利回り」が適切だったのかどうかの検証に使えます。

  • もし、会社の「DCの想定利回り」が、たとえば1.5%とか1.0%とか、今回報道された1.86%より低かったとしたら、現時点の事実として、「従業員に優しい経営判断だった」といえるでしょう。

    一般的には、制度設計時点の想定利回りが低いほど、
    会社が加入者のために拠出する毎月の掛金負担[人件費]が増える、
    すなわち、加入者の積立投資の原資が増える、からです。

  • 会社の「DCの想定利回り」が、たとえば2.0%とか2.5%とか、今回報道された1.86%より高かったとしたら、逆のことがいえます。

企業型DCに加入している方は、導入当時に会社が説明していた「DCの想定利回り」を確認してみてはいかがでしょうか?

現時点の事実として、その当時の経営者や人事部が従業員を大切に思っていたのかどうかの判断材料の一つになると思います(そんなことは、とっくにわかってるよ! という方も多いでしょうが -笑)。

 


 

なお、通常、企業型DCは、従業員の給与とは別に、会社が対象者全員の掛金を負担します(会社からすれば、退職金の一種ですので)。
したがって、企業型DCを導入しても、当たり前ですが従業員の給与が減ることはありません。

ところが、従業員の給与の一部をDCの掛金に充てさせる(給与が減る)タイプの「なんちゃって企業型DC」も厚生労働省は認めており、そういう会社は実際に存在します。
このタイプは「選択型」とか「選択制」などと呼ばれます。
あなたの会社の企業型DCが、残念ながらこのタイプだった場合、上記の、

  • 会社がDCを導入するときに採用した「想定利回り」が適切だったのかどうか
  • その当時の経営者や人事部が従業員を大切に思っていたのかどうか

の記載内容は当てはまりませんので、この記事はお読み捨てください(自分の意思で給与を減らし、その額を企業型DCの仕組みの中で積立投資しているだけなので、想定利回りに関する会社の責任はありませんね)。