確定拠出年金(DC)の出口戦略についての相談が増えてきました。
DCは確定給付企業年金(DB)などと違って会社(や企業年金基金)が何もしてくれない完全自己責任の制度ですので、自分に合った、納得できる出口戦略を実行したいですよね。
1. 受け取り方 (1) 受け取れる年金の種類を確認する |
① 終身年金 ② 確定年金・一時金 |
(2) 税金の影響を考える |
① 年金 ② 一時金 |
(3) いつ(からいつまで)受け取るのかを考える |
① 終身年金 ② 確定年金 ③ 一時金 |
2. リスク資産の取り扱い (1) 前提 (2) 2つの考え方 (3) 時間分散移換 |
一時金 |
今回は「時間分散移換」について、もう少し具体的に紹介します。
過去記事をお読みでない方は、上の表の、できれば「1. (1)」から、少なくとも「2. (1)」からお読みください。
2. リスク資産の取り扱い
(3) 時間分散移換
目的:
- ポートフォリオ全体のリスク水準を維持したまま、リスク資産(エクスポージャー)をDC制度の枠から証券会社の口座へ、時間をかけて移換します。
これにより、相場変動をある程度平準化してDCからExitできることを期待します
(リスク資産を買い増していくときに用いられる手法の一つである「ドル・コスト平均法」の裏返しの考え方です)。
前提:
- 移換期間中は現役としての収入・所得があるため、証券会社における積立投資を継続していると思われますが、それについては記載しません。
- 移換先は、一般NISA口座の利用可否によって、「一般NISA口座(と特定口座)」または「特定口座」を選択します。
- 既存の一般NISA口座でロールオーバー対象年分の残高がある場合、その検討も必要ですが、それについては記載しません。
方法:
- ① 移換開始時期の決定
いつから移換を開始するか、決定します。
例:58歳に到達する年の1月から - ② DC:掛金配分割合の変更
この時点をもって(例:58歳に到達する年の1月初旬)、
DCの掛金(毎月の積立原資)を、100%「1年定期預金」などの安全資産に配分し直します
(掛金の将来分を、積立投資ではなく積立貯蓄にする、という意味です。途中解約コスト[元本割れ]が発生しない商品を選びましょう)。 - ③ 60歳到達までの残り月数の確認
同時に(例:58歳に到達する年の1月初旬)、
60歳到達までの残り月数を数えます(例:33ヶ月)。 - ④ DC:スイッチングで「売り」指図する口数の算出
同時に(例:58歳に到達する年の1月初旬)、
DCで運用している(複数の)投資信託の残高(口数)を、60歳到達までの残り月数(例:33)で(それぞれ)割り、(投資信託ごとに)「割った結果の口数」をメモします
(割った結果の口数が、このあと、毎月のスイッチングで「売り」指図する口数の目安になります)。 - ⑤ DC:スイッチング
同時に(例:58歳に到達する年の1月初旬)、
投資信託ごとに、「割った結果の口数」を「1年定期預金」などの安全資産にスイッチング指図します。
↓
【翌月から毎月】
翌月から(例:58歳に到達する年の2月初旬から)、⑤(スイッチング)を繰り返します(例:32回)
(分配がある投資信託の場合、途中で口数が増えますが、調整しても無視しても、大差はないでしょう)。 - ⑥ 証券会社:買い付け
【毎月】(例:58歳に到達する年の1月後半から)
⑤(スイッチング)の指図が執行されるタイミングに合わせて(できるだけ近い日に)、証券会社の口座において、その月のDCのスイッチングの「売り」と(それぞれ)おおむね同額になるよう、(同種の)投資信託を毎月買い付けます。 - ⑦ DC:一時金請求
【60歳到達時】
60歳到達時点で、DCの残高全額が「1年定期預金」などの安全資産になっていますので、「100%一時金」の裁定を運営管理機関に請求し、預金口座で受け取ります。
これにより、ポートフォリオ全体のリスク水準を維持したまま、DCから証券会社へのエクスポージャーの時間分散移換が完了します。
前回の記事に書いたように「(移換開始前の時点で)DCの残高を上回る(十分な)預金がある」ことが前提ですが、「DCの老齢給付を終身年金で受け取れる(幸運な)方」を除けば、この「時間分散移換」か、または前回ご紹介した「一括移換」が、DC出口戦略におけるリスク資産の取り扱いのご参考になるのではないでしょうか。