「企業型 確定拠出年金(企業型DC)の加入者の多くは、個人型DC(愛称 iDeCo)に加入したくても加入できない」という現状について、これまで何度か書いてきました。
この課題の改善を図るための検討が進んでいます(2019/11/8 厚生労働省 社会保障審議会 企業年金・個人年金部会、など)。
現在、企業型DCの加入者がiDeCoにも加入できるケースは、事実上、「労使合意に基づいて、規約の定めを追加し、かつ、事業主掛金の上限を引き下げた企業」に限られています(企業型DC導入事業主のうち、わずか4%とのことです)。
最近、報道が増えているように、公的年金の見直しが議論されていますが、これに併せ、私的年金の見直しも進んでいます。
私的年金見直しの一つに、「より多くの人がiDeCoを利用できるよう、制度・手続き両面を改善すべき」という議論があり、その中で、「規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくてもiDeCoに加入できるようにする」案が検討されています。
1. 現行のルール
会社員は、「どのような会社に、どのような雇用契約や採用経緯で雇われているか」によって、「iDeCoに加入できるか」「加入できる場合、いくらまで掛金を拠出できるか」が、細かく分類されています。
なぜこのように分類することになったのか、決定の根拠や経緯の説明を厚生労働省から聞く機会が最近ありました。
説明を聞いてある程度納得したものの、やはり細かすぎ! だと思います(苦笑)。
ご自身(あるいは配偶者)がどのパターンか照らしながら、以下、ご確認ください。
- (1) DCなし・DBなし
勤務先に企業型DC制度がなく、確定給付企業年金(DB)制度(または厚生年金基金制度)もない会社員、または、制度はあるが加入範囲外のため、いずれにも加入できない会社員
= iDeCoに加入できる【最大2.3万円/月】 - (2) DCなし・DBあり
勤務先に、企業型DC制度はないが、確定給付企業年金(DB)制度(または厚生年金基金制度)はあり加入している会社員
= iDeCoに加入できる【最大1.2万円/月】 - (3) DCあり・DBなし
勤務先に企業型DC制度があり加入しているが、確定給付企業年金(DB)制度(または厚生年金基金制度)はない(または、制度はあるが加入範囲外のため加入できない)会社員のうち、 - (3)の①
企業型DCの規約に「企業型DCの加入者がiDeCoにも加入できる」旨の規定があり、かつ、事業主掛金の最高額が月額3.5万円以下で制度設計されている場合
= iDeCoに加入できる【最大2.0万円/月】 - (3)の②
企業型DCの規約に「企業型DCの加入者がiDeCoにも加入できる」旨の規定がない、または、事業主掛金の最高額が月額3.5万円を超える制度設計である、あるいは両方に該当する場合
= iDeCoに加入できない - (4) DCあり・DBあり
勤務先に、企業型DC制度と、確定給付企業年金(DB)制度(または厚生年金基金制度)があり、両方に加入している会社員のうち、 - (4)の①
企業型DCの規約に「企業型DCの加入者がiDeCoにも加入できる」旨の規定があり、かつ、事業主掛金の最高額が月額1.55万円以下で制度設計されている場合
= iDeCoに加入できる【最大1.2万円/月】 - (4)の②
企業型DCの規約に「企業型DCの加入者がiDeCoにも加入できる」旨の規定がない、または、事業主掛金の最高額が月額1.55万円を超える制度設計である、あるいは両方に該当する場合
= iDeCoに加入できない
今回は企業型DCありきの記事ですので割愛しますが、iDeCo側から見ると、上記のパターンのほか、さらに「自営業者や学生など」「専業主婦など」「公務員や私学共済加入者など」もあります(複雑ですね...)。
2. 検討されている案
厚生労働省は、「掛金の合算管理の情報連携※ の仕組み」を構築することにより、「規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、全体の限度額から事業主掛金を控除した残余の範囲内で、iDeCo(月額2万円以内)に加入できるように改善する」という案を検討しています。
※ 事業主掛金を管理する「企業型DCの記録関連運営管理機関(4社)」と、iDeCoの掛金を管理する「国民年金基金連合会」との情報連携
さらに、法改正後の普及に向けて、企業型DCの加入者が「自分はiDeCoにいくらまで拠出できるのか」簡単に把握できるよう、企業型記録関連運営管理機関の加入者向けホームページにおいて、その人のiDeCo拠出可能額(見込み)を表示する方向で調整中、とのことです(下に画面イメージを転載)。
確かに、加入者サイトに自分のiDeCo拠出可能額が表示されれば、わかりやすいですね。
どうせなら、ログイン直後のトップページにスクロールなしで表示されれば、なおよいと思います。
ただ、自社(またはグループ会社)がiDeCoも手掛けている運営管理機関の場合、その申し込みページに誘導したがると思います。
その辺に規制を設けるのかどうか、少々気になります。
社員に、企業型DCの運営管理機関の選択権はありません(自分の意見と一致するとは限らない「労使合意」で決められてしまうため)。
金融リテラシーや老後資金形成への関心が高い、いわゆる「詳しい人」ほど、「ウチの会社のDCには、残念な投資信託しかラインナップされていない...」と不満を持つ人が多いはずです。
そういう人は、iDeCoにも加入できるようになったとき、「せめてiDeCoの運営管理機関は自由に選びたい」と考え、自分で比較検討するでしょう。
逆に、「全然詳しくないけど、iDeCoもやらないともったいないらしいから、とりあえず始めよう」など、おそらくは多数派の人たちは、運用商品や受け取り方法の違いを比較検討することなく企業型DCと同じ運営管理機関に加入してしまうのではないでしょうか。