あなたの家計は 100歳まで もちますか?

独立系FP 福嶋淳裕のブログ

資産所得倍増プラン iDeCo

前回の続きです。今回はiDeCoの制度変更に関する概況をまとめてみました。

 

 

6月7日:「骨太の方針2022」抜粋(太字修飾は福嶋が付加)

第2章 新しい資本主義に向けた改革

1.新しい資本主義に向けた重点投資分野

(1)人への投資と分配

(「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」)

投資による資産所得倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、高齢者に向けたiDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める。

 

iDeCoについての私、福嶋の要望は、6月10日に投稿したように、

  • 拠出限度額は、働き方や勤務先の企業年金制度に関係なく、単一に!
    誰もがわかりやすいシンプルな制度(NISAのように、国民共通の限度額)にして欲しいです。
    「無職(学生、専業主婦)」「自営業」はまだしも、「会社員」をDBや企業型DCの加入状況によって細かくグループ分けして拠出限度額を設定していることが、iDeCo加入検討を妨げる(わかりにくくしている)要因と感じています。
    働き方や勤務先の違いによる老後保障格差を拡大させたくないという厚生労働省の思いはわかりますが、公平を目指して複雑に調整したところで、結局は、「いつの時代だって、やるヤツはやるのよ。やらないヤツはやらない」のではないでしょうか。

  • 「特別法人税」の撤廃を!
    一般のメディアではめったに取り上げられませんが、凍結が繰り返されながらいつ爆発するかわからない、この爆弾(特別法人税)を処理することが最重要かもしれません。
    もし爆発したら、企業型DCも個人型DC(iDeCo)も吹っ飛びます。

の2点でした。

 

その後、日本証券業協会が7月20日に発表した「中間層の資産所得拡大に向けて ~資産所得倍増プランへの提言~」、企業年金連合会が7月29日に厚生労働省に提出した「令和5年度 企業年金税制改正に関する要望」、厚生労働省が8月31日に発表した「令和5年度 税制改正要望事項」をざっくり比べると下表のとおりです。

6月10日
福嶋

7月20日
日本証券業協会

7月29日
企業年金連合会

8月31日
厚生労働省

拠出限度額の単一化 iDeCo拠出可能額
=拠出限度額
-事業主掛金額(企業型DC・DB)
  新しい資本主義実現会議で策定される税制上の所要の措置
特別法人税の撤廃 同左 同左 同左

 

原文の抜粋を以下に引用しておきます(太字修飾は福嶋が付加)。

 

7月20日日本証券業協会「資産所得倍増プランへの提言」

4.(1)③iDeCo等の拠出限度額の引上げ

企業型DC(マッチング拠出)、DB、iDeCoの制度をトータルに考えて、拠出限度額を引き上げる。例えば、更なる公平性確保のため、拠出限度額から事業主掛金額(企業型DC・DB)を差し引いた金額をiDeCo拠出可能額としてはどうか

参考資料5

特別法人税を撤廃

 

7月29日:企業年金連合会「令和5年度 企業年金税制改正に関する要望」

1.特別法人税の撤廃

特別法人税については、即刻撤廃すべきである。仮に、即時の撤廃が行われないとしても、課税停止期間は延長されるべきである。

 

8月31日:厚生労働省「令和5年度 税制改正要望事項」

年金

  • 企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長
    企業年金等の積立金に対する特別法人税について、これらの普及を図るため及び健全な運営を確保するため、これらの積立金に対する特別法人税を撤廃する(撤廃に至らない場合、課税停止措置の延長を行う。)。
  • 個人型確定拠出年金制度(iDeCo)の改革等に伴う税制上の所要の措置
    新しい資本主義実現会議に設置される検討の場において議論・策定される「資産所得倍増プラン」に基づき、税制上の所要の措置を講じる。

 


 

ときの首相が「金融所得課税の強化」という暴論から「投資による資産所得倍増」に変節してくれたにもかかわらず、iDeCoの制度変更については所管官庁の意欲(やる気?)があまり伝わってきません。

租税特別措置法に基づく、比較的単純なNISA(金融庁所管)と異なり、iDeCoは年金制度であり(厚生労働省所管)、関係する法令が非常に多岐にわたります。わずか3カ月では具体的な文言をまとめられなかったのでしょう。

そもそもiDeCoに加入できる人は「国民年金の被保険者(第1号/第2号/第3号/任意加入)」です。加入可能年齢の上限をさらに引き上げる法改正のハードルはかなり高いと思われます。

となると、年末までの残り3~4カ月で検討できる論点は、やはり「拠出限度額ルールの見直し」です(事務手続きの簡略化などもありがたい改善ですが、「iDeCoの改革」とまではいえないでしょう)。しかしながら、私と同じ「単一化」論は聞こえてきません。(※) 「働き方や企業年金制度の加入状況による複雑なグループ分けを維持したまま、小幅の増額で終わる(わかりにくさが残る)」のではないかと懸念しています。

また、毎年の恒例行事である特別法人税撤廃要求については、今回は、資産所得倍増プランという錦の御旗を掲げられる絶好の機会です。今までにない追い風が瞬間的に吹いている中、「課税停止措置の延長」には言及せず「撤廃」だけ強く主張すべきだったのではないかと思います。

今後も動向を観測し、投稿していきます。

 

※ 今朝(9月10日)の投稿後、私の「単一化」論と同じ趣旨のコラムが日本経済新聞に掲載されていたことに気づきました!
 2022年9月9日夕刊 マーケット・投資面
 十字路「DC改革で資産所得倍増を」
 フィデリティ・インスティテュート首席研究員 浦田春河氏

複雑なルールは個人を対象とする制度の最大の敵である。...

全国民統一の限度額を切りのいい数字で設定する。... こうした使い手目線の設計思想が必須だ。....

「新しい資本主義実現会議」のメンバーの方々にこのコラムが届くことを祈っています。

 

関連記事:

2022-09-01 資産所得倍増プラン NISA

2022-06-10 資産所得倍増プラン

2021-04-11 私的年金の改正動向