疾病による史上初の緊急事態宣言まで発出されたコロナショックの中、「投資の話題はいかがなものか」などのご意見もありましょうが、中長期的な視点で投稿します。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、日本の国民年金と厚生年金の積立金の管理・運用を担当する、世界最大の年金基金です。
あまりの巨大さから、俗に「クジラ」とも呼ばれています。
GPIFの年金資産運用の基本的な考え方は、分散・長期投資の王道ともいえ、個人にとっても老後資金形成の参考になります。
2020/3/31、GPIFは新しい「基本ポートフォリオ」を公表しました。
分散・長期投資を前提としたポートフォリオを構築するとき、運用するアセットクラス(資産区分)ごとに配分比率の目標を設定することを、個人投資家は「アセットアロケーション」といいますよね。
他方、機関投資家のうち、公的年金や企業年金などいわゆる年金基金では、「政策アセットミックス」「政策的資産構成割合」「基本資産配分」などといいます。GPIFはこれを「基本ポートフォリオ」といっています。
資産区分ごとに設定した配分比率の目標、という意味ではどれも同じです。
なお、通常、配分比率の目標と同時に、「乖離許容幅」(「許容乖離幅」「許容範囲」)も決めます。
GPIFの基本ポートフォリオの今回の主な変更内容は次のとおりです。
旧:2019年度まで
資産区分 | 目標の比率 | 乖離許容幅 |
---|---|---|
国内債券 | 35% | ±10pt |
外国債券 | 15% | ±4pt |
国内株式 | 25% | ±9pt |
外国株式 | 25% | ±8pt |
新:2020年度から(5カ年)
資産区分 | 目標の比率 | 乖離許容幅 | ||
---|---|---|---|---|
債券 | 国内債券 | 25% | ±7pt | 「国内債券+外国債券」の乖離許容幅 ±11pt |
外国債券 | 25% | ±6pt | ||
株式 | 国内株式 | 25% | ±8pt | 「国内株式+外国株式」の乖離許容幅 ±11pt |
外国株式 | 25% | ±7pt |
- 伝統4資産(内外の債券と株式)の均等配分に!
(割と単純ですな。 -笑-
アセットアロケーションに興味やこだわりがない人であれば、伝統4資産均等配分のバランス型投資信託はたくさんありますので、その中から良質なものを選べばOK、正解の一つ、ともいえます)
- 乖離許容幅は、外国債券は拡大、他の3資産は縮小
- 新たに内外資産を併せた「債券」「株式」の区分を設け、それぞれ11ポイントの乖離許容幅を設定
- 旧・基本ポートフォリオにおいては、国内債券の目標比率は35%でしたが、ご存じのとおり日銀の金融政策の結果、国内債券の利回りは低下し、リターンを期待できる国内債券は減少していました(というか、「なくなった」に近い状況でした)。
これによりGPIFの国内債券の実際比率は、乖離許容幅を考慮した下限(25%)近くまで一時低下。
2018年9月には、基本ポートフォリオの対象外だった短期資産(個人でいえば、「預金」)を国内債券と合算することで国内債券の比率を満たすように計画を変更しました(これについては当時、このブログに投稿しています)。
さらに2019年10月には、為替ヘッジ付き外国債券を国内債券枠に算入するなど、GPIFは国内債券枠の実質的な見直しを進めていました。
- 新・基本ポートフォリオにおいては、為替ヘッジ付き外国債券と円建て短期資産は国内債券に区分し、外貨建て短期資産は外国債券に区分するそうです。
また、オルタナティブ資産(インフラストラクチャー, プライベートエクイティ, 不動産など、個人でいえば、「ソーシャルレンディング」や「REIT」)は、個々のリスク(標準偏差)とリターンの特性に応じて、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式のいずれかに区分する、とのこと。
オルタナティブ資産全体の上限比率は5%に設定するものの、「環境の変化によって5%を超える場合は、機関決定のうえで上振れも容認する」そうです(この辺の柔軟性は、個人投資家も必要でしょう)。