あなたの家計は 100歳まで もちますか?

独立系FP 福嶋淳裕のブログ

特定口座から新NISAに移す?

各種報道によれば、新NISAはかなり盛り上がっているようですね。一方、特定口座で評価益が積み上がっている場合、
・特定口座の資産をそのまま保有して運用を続けるべきか、
・それともいったん売却して新NISAで買い直すべきか、
悩んでいる人は多いでしょう。知人から質問を受けたこともあり、考え方をまとめてみました。

前提:

  • 課税口座に置いている資産に評価益が出ている
    • 課税口座とは、特定口座(源泉徴収あり or なし)や一般口座のことです。
    • この記事での資産は「償還日が無期限で、かつ分配実績がない投資信託」とします。
  • 当面の間、新NISAの年間投資枠(360万円)をニューマネーで使い切る予定はない
    • 「ニューマネー」は、給与や年金など、家計に定期的に入ってくるお金の一部を元手とした投資資金、という意味で使っています。元々は企業年金厚生年金基金)の運用規制で使われていた用語です(母体企業が基金に拠出する掛金、という意味合いでした)。
    • これに対して「オールドマネー」は、保有している資産を売却して得たお金の一部または全部を元手とする投資資金、という意味になります。
    • なお、一般NISAの資産を2027年末までに売却して得るお金を元手とする投資資金がおおむね定期的にある場合、この資金は本来オールドマネーですが、本記事の文脈においてはニューマネーとみなします。
  • 課税口座の資産をそのまま保有して運用を続ける場合、将来、最終的な換金時の利益額は、今よりも大きくなることを期待(予想)している。
    【重要】いったん売却して新NISAで買い直す場合、新NISAでの運用成績がプラスで終わること(最終的な換金時に損失が出ないこと)を期待している
    いずれにせよ、「長期的には儲かる」つもりでそもそも投資している。

論点:

  • 利益(売却益、譲渡益)に対する税金を今払うのと、将来払うのと、どちらが得か?
    • 「税の繰り延べ効果」をどのように考えるか?

選択肢:

  • (1) 課税口座のまま保有する
    今は税金を払わず、その分を含めて運用することで、より大きく増やしたい(=税の繰り延べ効果)。一方で、将来の利益額が今よりも大きくなれば、それに比例して換金時の税額も大きくなることを覚悟する。
  • (2) 新NISAで買い直す
    今のうちに売却し、税額を差し引いた残りを元手に新NISAで買い直し、その後は税金を気にすることなく、無期限の非課税運用を続けたい。税を繰り延べず、源泉徴収または確定申告で納税するため、新NISAで買い直すときの元本は小さくなる。
  • 今回は対象にしませんが、(1)の派生形、発展型?として以下も考えられます。
    (3) 課税口座で保有し続け、自分は手を付けない
    相続財産にする
    課税口座の資産は、取り崩す必要が生じない限り手を付けず、相続させる(検討するテーマが、所得税・住民税、はたまた社会保険料・医療費自己負担率などへの影響ではなく、相続税に変わります)。
    認知能力低下後、処分を家族などに任せる
    (後見、信託、その他の方法がありますが、説明は割愛します)

結論:

  • 課税口座に置いている資産に評価益が出ている場合、かつ当面の間、新NISAの年間投資枠(360万円)をニューマネーで使い切る予定がない場合は、上記選択肢(2)の検討をお勧めします。
    • ただし、上記前提の三つ目(新NISAでの運用成績がプラスで終わること)が最も重要かつ不確実であるため、「(2)が絶対的に有利、お得」と断言することはできません。未来に期待することはできても、未来を予知することはできませんので...。


 

投資信託の売却方法としては、一時にまとめて売るのではなく、「定時定額買付(ドルコスト平均法による積立投資)の逆」の考え方で、時期(時間)を分散して同じ口数を粛々と売っていくのが最善、と私は考えています。

・「買い」は複数回に分けて「金額指定」で!
・「売り」も複数回に分けて、ただし「口数指定」で!