各種報道でご存じのとおり、6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022(通称、骨太の方針2022)」が閣議決定されました。
個人投資家の多くが心配していたであろう「金融所得課税」の文言は見当たらず(いったん封印しただけなのかもしれませんが)、耳触りのよい「資産所得倍増プラン」が盛り込まれています。
ひとまず警戒を緩めてよいのかもしれません。
骨太の方針2022における資産所得倍増プランの記述は、これから見返すこともあると思いましたので引用しておきます(太字修飾は福嶋が付加)。
第2章 新しい資本主義に向けた改革
1.新しい資本主義に向けた重点投資分野
(1)人への投資と分配
(「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」)
我が国の個人金融資産2,000 兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されている。
投資による資産所得倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、高齢者に向けたiDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める。
これらを含めて、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する。
その際、家計の安定的な資産形成に向けて、金融リテラシーの向上に取り組むとともに、家計がより適切に金融商品の選択を行えるよう、将来受給可能な年金額等の見える化、デジタルツールも活用した情報提供の充実や金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促すための制度整備を図る。
内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2022」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/decision0607.html
NISAもiDeCoも今まさに数年がかりの制度改正、順次施行の真っ最中なので(下記の関連記事をご参照ください)、「資産所得倍増プラン」は、それらが終わってからの話になるのだろうと個人的には予想しています。
私の希望は次の4点です。
- NISAの時限措置を撤廃し恒久化を!
制度を恒久化せずに「資産所得倍増プラン」などと言われても、不安が残ります。政権がリーダーシップをもって財務省を説得できれば実現可能でしょう。 - つみたてNISAでも新NISAでもなく、一般NISAへの原点回帰(制度一元化)を!
つみたてNISAの新設にあたって対象商品を絞った意義には大いに賛同し、「金融庁はいい仕事をした」と本当に思っています。とはいえ、個人が自分のお金で投資する以上、何を買うかは本来、自由に(自己責任で)選べるべきです。
また、新NISAは、2階建て化により仕組みが複雑になります。金融資産運用に詳しい人ほど、嫌がっているのではないでしょうか。
誰もがわかりやすいシンプルな一般NISAに原点回帰する方向で、NISA制度を一元化しましょう(恒久化すれば、わかりにくいロールオーバーも不要になります)。 - iDeCoの拠出限度額は、働き方や勤務先の企業年金制度に関係なく、単一に!
格差助長批判に過度に敏感になって拠出限度額を細かく区別するのはやめて、誰もがわかりやすいシンプルな制度にしましょう。iDeCoを紹介する立場としても、拠出限度額を説明する際のわかりにくさには毎回悩まされています。 - iDeCoにも関係する「特別法人税」の撤廃を!
一般のメディアではめったに取り上げられませんが、凍結を繰り返しながらいつ爆発するかわからない、この爆弾を処理することが最重要かもしれません。政権がリーダーシップをもって財務省を説得できれば実現可能でしょう。
数年後に実現するでしょうか?
今後も動向を観測し、投稿していきます。
関連記事:
2021-05-01 NISAの改正動向
2021-04-11 私的年金の改正動向