あなたの家計は 100歳まで もちますか?

独立系FP 福嶋淳裕のブログ

節税・師走モニタリング(続)

「節税のための師走モニタリング」の後編です。前回は、

  • 前年分の確定申告の結果、または前年分の確定申告をしていないため、
    繰り越した損失がない

ケースを取り上げました。今回は、

  • 前年分の確定申告の結果、
    繰り越した損失がある(申告書第三表(88)「翌年以後に繰り越される損失の金額」がある)

ケースについて紹介します。前提や注意事項は前回と同じです。 

 

  

f:id:Free_Spirit_19790714:20181201113418j:plain

 

1. 師走モニタリング[繰越損失がない場合]のおさらい

「繰越損失がない場合」の考え方を簡単におさらいすると、

  • 年末に評価損が出ている投資信託を売ることで、
    ①今年分の実現益を圧縮するかゼロにできる
    ②実現損を出せれば、その損失を翌年に繰り越せる
     ↓ これらにより、
  • ①「今年分の税金」を圧縮するかゼロにできる
    ②「翌年以後3年以内の税金」を圧縮するかゼロにできることを期待する

というものでした。

2. 師走モニタリングの流れ[繰越損失がある場合]

「繰越損失がある場合」は、「ない場合」に比べ、注文の自由度が高まる分、検討が複雑になります。
冗長な記事になることを避けたいため、前回と同じ作業については補足説明部分を削除しています。

(1) 今年に繰り越された損失はいくらか?

前年分の申告書第三表(88)「翌年以後に繰り越される損失の金額」です。
この額を[1]とします。
マイナスを付けて表してください(-xxx,xxx円)。

(2) 今年の1月から12月中旬までの期間、課税口座で売却した投資信託があれば損益を通算する

この額を[2]とします。
プラスの場合、今年これまでのところ実現益が出ている、マイナスの場合はその逆、という意味になります。

(3) 課税口座に、評価損が発生している投資信託があるか?

ある場合、足元の評価損を[3]とします。
マイナスを付けて表してください(-xxx,xxx円)。 

(4) [1]+[2]+[3]はいくらか?

この額を[4]とします。

  • マイナスの場合、いわば、「足元の所得控除額」といえます(年末までに使える「非課税枠」のイメージです。この額を上限として、このあと年末までの数日間に発生する実現益に伴う税金を帳消しにできます)。

  • プラスの場合、「(1)繰越損失+(3)足元の評価損」よりも「(2)今年これまでの実現益」のほうが大きいことを意味しています。いわば、(損した以上に今年は儲かって)非課税枠を使い切った状態といえます。 
    プラスの場合は次の(5)を飛ばして3.に進みます。

(5) アセットクラスごとの配分目標に対する過不足を計算する

評価損が発生している投資信託を全額売却したとき、各アセットクラス(資産区分)の配分目標に対する超過額または不足額がいくらになりそうか、アセットクラスごとにそれぞれ計算し、表を作成します。

3. 売り注文または売買同時注文 

(1) 期限

クリスマスイブまでをめどに注文指図します。

(2) 上記2.(4)の額がプラスの場合

この場合は前回の「繰越損失がない場合の売り注文または売買同時注文」とまったく同じです。

課税口座で評価損が発生している投資信託「全額売却」指図します。

売却の結果、この投資信託が属するアセットクラス(資産区分)の配分比率が配分目標に対してどうなりそうかを計算し、乖離が生じる場合(普通は生じます)、配分目標との超過額または不足額がいくらになりそうかを計算します。

  • 売却することによって、今まで超過していた配分比率の超過が減り、配分目標に近づく場合
    → 終わりです。お疲れ様でした。
  • 売却することによって、今まで超過していた配分比率の超過が不足に転じ、配分目標を下回る場合
    → 次の「買い注文:」に進みます。
  • 売却することによって、今まで不足していた配分比率の不足がさらに増える場合
    → この場合も次の「買い注文:」に進みます。

買い注文:

  • ほぼ配分目標に戻るであろう金額で、
    (無理なら、可能な範囲で)
  • 同じ投資信託を、
    (または、ベンチマークが同じで分配実績がなく、より低コストな投資信託を探して)

「買付(購入)」指図します。

(3) 上記2.(4)の額がマイナスの場合

上記3.(2)の内容に加え、さらに、2.(5)で作成した表を眺めながら、すべてのアセットクラスをそれぞれの配分目標にもっとも近づけられるような「売り」または「売りと買い」を総合的に検討し、指図します。


配分目標に対する不足を圧縮またはゼロにするための「買い」については、純粋にリバランス目的で検討します。
買付資金が「投資に回してよい資金」の範囲内か? だけを気にすればOKです。


「売り」については、「配分が超過していて、評価益が出ている投資信託を、非課税枠の範囲内で売る」ことにより、リバランス効果を得るとともに節税を実現します(リバランスよりも節税を優先します)。

具体的には、
 「売り」候補の投資信託の実現益(見込み)の合計
  +[4]の額 ≦ 0
になるよう、売却する金額または口数を調整します。 

  • 例1
    ・「売り」候補の実現益(見込み)合計 100万円
    ・[4]の額はマイナス100万円
    ・ 100万円 +(-100万円)= 0 ・・・OK!

  • 例2
    ・「売り」候補の実現益(見込み)合計 70万円
    ・[4]の額はマイナス100万円
    ・ 70万円 +(-100万円)< 0 ・・・OK!

  • 例3
    ・「売り」候補の実現益(見込み)合計 100万円
    ・[4]の額はマイナス70万円
    ・ 100万円 +(-70万円)> 0 ・・・NG!
    この場合、「売り」候補の投資信託の実現益(見込み)合計が70万円以下(できれば70万円ちょうど)になるよう、売却する金額または口数を調整します。

4. おわりに

前回と今回の記事はいかがでしたでしょうか?
もし、さらによいアイデアをお持ちでしたら、あるいは記載の漏れや誤りを発見されましたら、記事をブラッシュアップしたいのでご連絡いただけると幸いです。

ご存じのとおり、投資・投機の理論, 手法, 戦略, 戦術には、古今東西、数えきれないほどさまざまなものがあります。
私の場合、自ら実践するとともに、人様(ひとさま)にレクチャーしている老後資金形成のコア戦略は、現代(近代)ポートフォリオ理論に則った「パッシブ(インデックス)型投資信託のバイ&ホールド」戦略です。

老後資金形成の実際において、税金インパクトを無視することはできません。

したがって私は、

  • 税金によるリターンの低下をできるだけ回避したいため、老後資金形成のコア戦略においては節税を重視し、リバランスは「買い」によって行います
  • 「税金が生じない売り」を行うことはありますが、「税金が生じる売り」によるリバランスは行いません

 


 

なお、この種のテーマは、執筆者自身のリアルな運用成果をお見せしないと説得力が弱いと思いますので、恥ずかしながら「私の金融資産残高推移(1999年4月末~2018年9月末)」として公開しています。

 参考記事:
 2018/9/30「サラリーマン個人投資家の家計(金融資産残高)推移の実例