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独立系FP 福嶋淳裕のブログ

投資信託の「総経費率」など

まだ先の話ですが、12月恒例の「師走モニタリング」と並行して、2019年枠の一般NISA資産を年末までに売却します。今年は収入激減のためiDeCo以外では投資信託を買っておらず、年末までの売却で得たキャッシュを元手に、1年ぶりの買い増し・乗り換え・リバランスや、新NISAでの買付を検討しようと考えています。そこで、私が気になっている投資信託の「総経費率」について比較してみました。ついでに「純資産総額」と「ベンチマークとの差異」についても確認します。

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投資信託の本当の年間運用コストを決算期ごとに概算で示す「総経費率」は、これまで運用報告書に記載されてきましたが、2024年4月から、目論見書にも記載されるようになります(投資信託協会による業界自主規制)。目論見書の作成費、株価指数の使用料、海外の信託機関に払う保管費用などの経費を「信託報酬」に含めて開示するか、含めずに開示するかは投資信託によって異なります。

総経費率が目に触れやすくなれば、さらには各種の投資信託検索サイトで総経費率での並べ替えが可能になれば、隠れコストを増やして信託報酬を安く見せかける悪質な投資信託を排除し、本当に低コストな投資信託を選びやすくなるでしょう。投資信託検索サイトの企画・運営側の皆さま、是非よろしくお願いします!

私は、自分がバイ・アンド・ホールドしたい投資信託(=おすすめしたい投資信託)について、ときどき投稿しています。今回比較した投資信託は、その中の「MSCIコクサイ(先進国株式)」連動型の2本と「S&P先進国REIT 除く日本(先進国REIT)」連動型の2本です。

1. MSCIコクサイ(先進国株式)

委託会社 投資信託 信託報酬 設定日
ニッセイ アセットマネジメント㈱ <購入・換金手数料なし>
ニッセイ外国株式インデックスファンド
0.09889% 2013年12月10日
三菱UFJ国際投信㈱ eMAXIS Slim
先進国株式インデックス
純資産総額に応じて
・5,000億円未満の部分
 0.09889%
・5,000億円以上1兆円未満
 0.09823%
・1兆円以上の部分
 0.09757%
2017年2月27日

(1) ニッセイ<購入・換金手数料なし>

決算日 純資産総額 総経費率 ベンチマークとの差異
【配当込みベンチマーク
6 2019年11月20日 1,432億円 0.16% +0.1
7 2020年11月20日 2,097億円 0.14% +0.2
8 2021年11月22日 3,607億円 0.15% +0.1
9 2022年11月21日 4,377億円 0.13% +0.1
  • 総経費率(年率)= 期中の運用・管理にかかった費用の総額(原則として、募集手数料、売買委託手数料および有価証券取引税を除く)を期中の平均受益権口数に期中の平均基準価額(1口当たり)を乗じた数で除した値
  • ベンチマークとの差異 = 当期の税引前分配金再投資基準価額騰落率(%)- 当期のベンチマーク騰落率(%)
    ベンチマークは「MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円換算ベース)」

(2) 三菱UFJ国際 eMAXIS Slim

決算日 純資産総額 総経費率 ベンチマークとの差異
2 2019年4月25日 425億円 0.15% +2.1
【配当抜きベンチマーク
3 2020年4月27日 854億円 0.14% +0.3
【以下、配当込みベンチマーク
4 2021年4月26日 1,949億円 0.12% +0.2
5 2022年4月25日 3,291億円 0.13% +0.1
6 2023年4月25日 4,351億円 0.12% +0.3
  • 第2期の「ベンチマークとの差異」で使われているベンチマークは配当相当分を含まないため、「+2.1」には配当金要因が含まれている点に注意が必要

(3) 所感

皆さまご存じのとおり、三菱UFJ国際 eMAXIS Slimは、この数年、投資信託業界で急成長し、パッシブ型(インデックス型)ではいまや圧倒的な存在感を示しています。心情的に先駆者、先駆けを贔屓し、後追いの小判鮫マーケティングを忌避する人を除けば、万人におすすめできると言ってよいのかもしれません。信託報酬が引き下げられ始める純資産総額5,000億円も目前です。

一方、三菱UFJ国際 eMAXIS Slimが登場する前からニッセイ<購入・換金手数料なし>を特定口座で買い付け、多額の含み益を抱えている人も多いでしょう。両者の「総経費率」と「ベンチマークとの差異」に大きな差はありませんので、税金を支払ってまで三菱UFJ国際 eMAXIS Slimに乗り換える必要はないと考えます。ベンチマークとの差異が安定的にゼロに近い方が、教科書的には優秀なパッシブ型投資信託である(ベンチマークと連動できている)とも言えますし。

2. S&P先進国REIT 除く日本(先進国REIT

委託会社 投資信託 信託報酬 設定日
りそなアセットマネジメント㈱ Smart-i
先進国リートインデックス
0.22% 2017年8月29日
三菱UFJ国際投信㈱ eMAXIS Slim
先進国リートインデックス
純資産総額に応じて
・500億円未満の部分
 0.22%
・500億円以上1,000億円未満
 0.21945%
・1,000億円以上の部分
 0.21890%
2019年10月31日

(1) りそな Smart-i

決算日 純資産総額 総経費率 ベンチマークとの差異
5 2022年6月27日 33億円 0.31% ▲0.7
6 2023年6月26日 38億円 0.31% ▲0.6

(2) 三菱UFJ国際 eMAXIS Slim

決算日 純資産総額 総経費率 ベンチマークとの差異
1 2020年4月27日 11億円 0.24% +0.7
2 2021年4月26日 70億円 0.33% ▲0.1
3 2022年4月25日 194億円 0.27% +0.1
4 2023年4月25日 210億円 0.28% +0.3

(3) 所感

後発の三菱UFJ国際 eMAXIS Slimは、先発のりそな Smart-iを純資産総額であっさり追い抜き、直近2期の総経費率、ベンチマークとの差異においても優れています。今後、「S&P先進国REIT 除く日本」連動型を買い増す分には、三菱UFJ国際 eMAXIS Slimを選ぶ方が、おそらく正解でしょう。一方、りそな Smart-iを特定口座で保有し、それなりの含み益を抱えている人にとっては、税金を考えると売るに売れず、悩ましいところです。

 


この記事は、投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としていません。投資は自己責任で!