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独立系FP 福嶋淳裕のブログ

DCの出口戦略を考えてみる④

確定拠出年金(DC)の出口戦略についての相談が増えてきました。

DCは確定給付企業年金(DB)などと違って会社(や企業年金基金)が何もしてくれない完全自己責任の制度ですので、自分に合った、納得できる出口戦略を実行したいですよね。

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1. 受け取り方

(1) 受け取れる年金の種類を確認する

① 終身年金を選択できる場合

② 終身年金を選択できず、確定年金か一時金かを選択する場合

(2) 税金の影響を考える

① 年金で受け取る場合

② 一時金で受け取る場合

(3) いつ(からいつまで)受け取るのかを考える

① 終身年金で受け取れる場合

② 確定年金で受け取る場合

③ 一時金で受け取る場合

 

今回は、「リスク資産の取り扱い」について取り上げます。

 

 

2. リスク資産の取り扱い

(1) 前提

  • この記事において、リスク資産とは、DCで運用できる商品のうち、元本変動型商品である投資信託を指します[リスク資産=投資信託]。
  • また、安全資産は、元本確保型商品のうち、定期預金(固定金利型1年定期など)を指すことにします[安全資産=定期預金]。

すべての人に当てはまるケースを網羅することは困難ですので、次のような人物を想定します。

  • 投資信託を、「DC」と「証券会社(の特定口座や各種NISA口座)」の両方で運用している。
  • DCと証券会社のそれぞれで、「国内株式」「先進国REIT」などの粒度で分類した投資信託の残高(金額)比率はかなり異なっている。
  • 近い将来、DCの加入上限年齢が引き上げられる可能性があることは見聞きしているが、とりあえずは現行制度のまま、60歳到達時に掛金拠出が終了すると考える。
  • 50代後半も60歳到達後も、しばらくの間は現在と同水準のリスクを許容できると思うので、方針を変えずに運用を続けていきたい(加齢に応じてリスク資産を段階的に減らす考えは、今のところはない)。
  • DCの残高を上回る預金がある。

 

(2) 2つの考え方

① 一括移換

「60歳になったら即、DCの老齢給付を全額一時金で運営管理機関に請求し、実際に個々の投資信託の売却が約定するであろう日に合わせて、ほぼ同じ種類の投資信託を、証券会社の口座でほぼ同じ額で買い付ける」移換方法です。

もっともシンプルであり、かつ、DC加入者期間中の運用益非課税メリットを期間ギリギリまで享受しつつ、DC内のリスク資産、エクスポージャーを証券会社の口座にシームレスに移換できます(投資信託の現物を移換するわけではありません)。

他方、DC運営管理機関が投資信託を売却するタイミングの相場で一時金の額が確定するため、「結局、DCの運用成績はどうだったのか?」という観点では、一括売却タイミングによる基準価額変動リスクを負うことになります。

  • DCの運用結果は、長い間働いてきたことに対する退職金なのであるから、吉と出るか凶と出るか、運を天に任せる一発勝負は避けたい」と考えるか、
  • 「異なる制度の間でエクスポージャーをシームレスに移換できるなら(DC → 特定・NISA口座)、DC制度単体の運用結果がどうだったかに意味はない。DCを含めたポートフォリオ全体のアセットアロケーションのほうが重要である」と考えるか、

人によって異なるでしょう。

② 時間分散移換

タイミングリスクを許容できる人は①の方法(一括移換)でよいでしょうが、メンタル的に許容できない人や、一般NISAの枠(120万円/年)にできるだけ移換したい人には、手間はかかるものの、「60歳到達までの数年間、DCを含むポートフォリオ全体のリスク水準を維持したまま、毎月少しずつ、DCのエクスポージャーを証券会社に移し換えていく」方法(時間分散移換)をおすすめします。

現物を移換することはできませんので、DC内で、投資信託を定期預金に毎月少しずつスイッチングするとともに、ほぼ同じ種類の投資信託を、証券会社の口座でほぼ同じ額ずつ買い付けていく方法です。

 


 

次回は、「時間分散移換」について、もう少し具体的に紹介します。