確定拠出年金(DC)の出口戦略についての相談が増えてきました。
企業型DCで、従業員の入社時に遡って過去勤務期間分の退職金をDCに移行したケースでは、50代でDCの残高が1,000万円を上回っている方もいらっしゃいます。
額が額ですし、企業型DCは確定給付企業年金(DB)などと違って会社(や企業年金基金)が何もしてくれない完全自己責任の制度ですので、自分に合った、納得できる出口戦略を実行したいですよね。
第1回:
第2回:
今回は、「いつ(からいつまで)受け取るのか?」についてまとめてみます。
1. 受け取り方
(3) いつ(からいつまで)受け取るのかを考える
「リスク資産の取り扱い」はこのあとのテーマであるため、残高のすべてを安全資産(定期預金などの元本確保型商品)で運用していることを前提とします。
① 終身年金で受け取れる場合
終身年金は、受け取り開始後、亡くなるまでの長期にわたって、税・社会保険料、医療費・介護費に影響することが考えられます。
しかしながら、将来の制度変更や、自分(と配偶者)がどのような治療や介護が必要になるかを見通すことはできません。
ならば割り切って、これらは無視し、DC加入者資格の喪失後(ほとんどの人の場合、60歳到達後)、ただちに終身年金の受け取りを開始しましょう。
② 確定年金で受け取る場合
受け取り期間は、「5・10・15・20年から選択する」など、規約によってさまざまです。
請求できる時期は、ほとんどの人の場合、60~69歳の10年間の任意のタイミングです(70歳になってしまうと、一時金でしか受け取れなくなりますのでご注意を!)。
したがって、「受け取り期間」と「請求時期」の組み合わせによって多くのパターンがありますので、ライフプランに合わせて選ぶことになります(税・社会保険料、医療費・介護費への影響を無視することは、①と同じです)。
以下は考え方の例です。両極端を挙げてみました。
- 60歳の定年でリタイアしたいので、公的年金の受け取りが始まる65歳までの5年間の生活費に充てたい。 → 「60~64歳の5年間」を選択
- 70歳近くまでは働くつもりなので、受け取り開始はできるだけ遅くし、かつ、長い期間受け取りたい。 → 「69~88歳の20年間」を選択
③ 一時金で受け取る場合
こちらもほとんどの人の場合、 60~69歳の10年間の任意のタイミングで請求します。
ただ、第1回 に書いたように、各種手数料が本人負担の場合、安全資産の利息より各種手数料のほうが大きいでしょうし(受け取り終わるまで各種手数料が積み上がります)、また、第2回 に書いたように、一時金は、勤続年数が長い人ほどできるだけかからないよう、非常に大きな非課税枠(退職所得控除額)が設けられています。
これらを考えると、60歳到達時、ただちに受け取るほうがよいのではないでしょうか。
なお、今回の記事の前提を、「残高のすべてを安全資産で運用していること」としましたが、60歳到達時にまだリスク資産で運用していて、運用成績が思わしくなく、かつ、その後の回復を待ちたい(待てる)場合は、請求を70歳まで延期することも可能です。
今回の(やや乱暴な)まとめ
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終身年金で受け取れる場合、
請求可能になり次第、請求する。 -
確定年金で受け取る場合、
ライフプランに合わせて、「受け取り期間(5・10・15・20年など)」と「請求時期(60~69歳の任意のタイミング)」を選ぶ。 -
一時金で受け取る場合、
請求可能になり次第、請求する。
次回は、「リスク資産の取り扱い」についてまとめてみます。