このところ、厚生労働省所管の制度に関する投稿が多かったので、金融庁所管の制度についても投稿します。
というわけで今回のテーマは、公的年金・私的年金と並んで重要な「少額投資非課税制度(愛称:NISA)」です。
NISAは、制度の改正が2020年度税制改正大綱に盛り込まれ、2024年1月、大きく変わる見通しです。
少々先の話ですが、現役時代がまだまだ続く世代の方々はウォッチしていきましょう。
各種NISA制度の現状
現在、3種類のNISA制度が並立しています。
金融庁によると、2019年9月末時点の口座数は次のとおりです。
- 一般NISA(2014年1月開始)約1,170万 口座
- ジュニアNISA(2016年4月開始)約34万 口座
- つみたてNISA(2018年1月開始)約171万 口座
口座数だけで見れば「初代」の圧勝ですね。
一般NISAの使い勝手は証券会社の普通の口座(特定口座、一般口座)とほぼ同じですので、「使い勝手に制約がないにも関わらず、一定の投資分を節税できる(正確には、節税できる可能性がある)」点が、広く好まれたのでしょう。
現行の3制度を要点のみまとめておきます。
一般 NISA |
ジュニア NISA |
つみたて NISA |
|
---|---|---|---|
購入・加入年齢 | 20歳以上 | 0~19歳 | 20歳以上 |
購入できる金融商品 | 株式, 投資信託, ETF, REITなど | 同左 | 長期の積立・分散投資に適した投資信託など |
購入できる暦年 | 2014~2023年 | 2016~2023年 | 2018~2037年 |
購入の方法 | 制限なし | 同左 | 定時定額(積立) |
購入最大限度額 | 120万円×5年 =600万円 |
80万円×5年 =400万円 |
40万円×20年 =800万円 |
払出・受給年齢 | 制限なし | 18歳まで 払出しに 制限あり |
制限なし |
購入・拠出時の税制優遇 | 優遇なし | 同左 | 同左 |
運用益に対する税制優遇 | 5年間 非課税 (ロールオーバー [繰り越し] 1回可能) |
5年間 非課税 (制度終了後 20歳まで ロールオーバー可能) |
20年間 非課税 |
払出・受給時の税制優遇 | 優遇なし | 同左 | 同左 |
口座管理費用 | 無料 | 同左 | 同左 |
今後どう変わるのか
1. 一般NISA
- つみたてNISAの要素を追加した「2階建て」構造の新しいNISAになる。
- 購入できる暦年は、2024年から5年間。
「2階建て」というと1階部分の利用が必須に聞こえますが、投資経験がある人などは2階部分だけの利用も可能なようです。
1階と2階とで同じ金融商品を買えないケースが出てくることは少々面倒な改正です(たとえば、内外のREIT指数に連動する投資信託は、2階では買えますが1階では買えません)。
しかしながら、「事実上の制度延長」という点でとても意義のある改正だと思います。
1階部分 | 2階部分 | |
---|---|---|
購入できる金融商品 | つみたてNISAと同じ | 株式や投資信託など(整理・監理銘柄の株式やレバレッジ型の投資信託は除外) |
購入できる暦年 | 2024~2028年 | 同左 |
購入の方法 | 定時定額(積立) | 制限なし |
購入最大限度額 | 20万円×5年=100万円 | 102万円×5年=510万円 |
2. ジュニアNISA
- 予定どおり、2023年で制度を終了する。
- 一方、制度終了に伴い、払い出し制限(子どもが18歳になるまでは原則として払い出し不可、という制限)を撤廃する方向。
「これで使い勝手がよくなる!」という皮肉な意見もあるようです。その理由は、「子どもが18歳になるまで資金を拘束されるのはけっこうハードルが高いが、2024年1月までの拘束なら見通しを立てやすい」ということでしょう。
小さいお子様がいらっしゃるご家庭は、最終年の2023年分まで、1年あたり、かつ、お子様一人あたり80万円非課税投資枠を増やせます。検討してみてはいかがでしょうか。
3. つみたてNISA
- 購入できる暦年を5年延長し、2018~2042年とする。
え? 金融庁イチオシのつみたてNISAの改正はこれだけですか...。
内外のREIT指数に連動する投資信託の容認を期待していましたので、個人的には少々期待外れです。