あなたの家計は 100歳まで もちますか?

独立系FP 福嶋淳裕のブログ

DCの出口戦略を考えてみる③

確定拠出年金(DC)の出口戦略についての相談が増えてきました。

企業型DCで、従業員の入社時に遡って過去勤務期間分の退職金をDCに移行したケースでは、50代でDCの残高が1,000万円を上回っている方もいらっしゃいます。

額が額ですし、企業型DCは確定給付企業年金(DB)などと違って会社(や企業年金基金)が何もしてくれない完全自己責任の制度ですので、自分に合った、納得できる出口戦略を実行したいですよね。 

f:id:Free_Spirit_19790714:20190706104657p:plain

第1回:

freespirit1979.hatenablog.com

第2回:

freespirit1979.hatenablog.com

 

今回は、「いつ(からいつまで)受け取るのか?」についてまとめてみます。
 

 

1. 受け取り方

(3) いつ(からいつまで)受け取るのかを考える

「リスク資産の取り扱い」はこのあとのテーマであるため、残高のすべてを安全資産(定期預金などの元本確保型商品)で運用していることを前提とします。

① 終身年金で受け取れる場合

終身年金は、受け取り開始後、亡くなるまでの長期にわたって、税・社会保険料、医療費・介護費に影響することが考えられます。

しかしながら、将来の制度変更や、自分(と配偶者)がどのような治療や介護が必要になるかを見通すことはできません。

ならば割り切って、これらは無視し、DC加入者資格の喪失後(ほとんどの人の場合、60歳到達後)、ただちに終身年金の受け取りを開始しましょう。

② 確定年金で受け取る場合

受け取り期間は、「5・10・15・20年から選択する」など、規約によってさまざまです。

請求できる時期は、ほとんどの人の場合、60~69歳の10年間の任意のタイミングです(70歳になってしまうと、一時金でしか受け取れなくなりますのでご注意を!)。

したがって、「受け取り期間」と「請求時期」の組み合わせによって多くのパターンがありますので、ライフプランに合わせて選ぶことになります(税・社会保険料、医療費・介護費への影響を無視することは、①と同じです)。

以下は考え方の例です。両極端を挙げてみました。

  • 60歳の定年でリタイアしたいので、公的年金の受け取りが始まる65歳までの5年間の生活費に充てたい。 → 「60~64歳の5年間」を選択

  • 70歳近くまでは働くつもりなので、受け取り開始はできるだけ遅くし、かつ、長い期間受け取りたい。 → 「69~88歳の20年間」を選択

 

③ 一時金で受け取る場合

こちらもほとんどの人の場合、 60~69歳の10年間の任意のタイミングで請求します。

ただ、第1回 に書いたように、各種手数料が本人負担の場合、安全資産の利息より各種手数料のほうが大きいでしょうし(受け取り終わるまで各種手数料が積み上がります)、また、第2回 に書いたように、一時金は、勤続年数が長い人ほどできるだけかからないよう、非常に大きな非課税枠(退職所得控除額)が設けられています。

これらを考えると、60歳到達時、ただちに受け取るほうがよいのではないでしょうか。

なお、今回の記事の前提を、「残高のすべてを安全資産で運用していること」としましたが、60歳到達時にまだリスク資産で運用していて、運用成績が思わしくなく、かつ、その後の回復を待ちたい(待てる)場合は、請求を70歳まで延期することも可能です。

 


 

今回の(やや乱暴な)まとめ

  • 終身年金で受け取れる場合、
    請求可能になり次第、請求する。

  • 確定年金で受け取る場合、
    ライフプランに合わせて、「受け取り期間(5・10・15・20年など)」と「請求時期(60~69歳の任意のタイミング)」を選ぶ。

  • 一時金で受け取る場合、
    請求可能になり次第、請求する。

 

次回は、「リスク資産の取り扱い」についてまとめてみます。

 

「買い下がり」を始めました

本日(2019/8/5)、2ヶ月ぶりに買い下がり(追加投資によるポートフォリオの補強・補正)」を始めました。

 

f:id:Free_Spirit_19790714:20181023193608j:plain

 

私は、投資信託を定時定額で購入する「積立投資」以外に、内外の株価指数や米ドルなどの下落局面で投資信託をちびちびと買い増す(買い下がる)ことがあります(「積立投資」に対し、「追加投資」と呼んでいます)。

数週間にわたって買い下がることもありますが、今年(2019年)は機会に乏しく、1/4, 6/3, 6/4の3日間しか行えていません。

今日は久しぶりに出社して(まだ テレワーク期間 です...)、前場をチラ見し、「まだ少し早いかも」とは思いながらも「しょせんは少額(苦笑)」なので、昼休みに「TOPIX」と「S&P先進国REIT」の買い注文を指図しました。

今後の状況によっては、「MSCIコクサイ」も加えるかもしれません。

 


 

freespirit1979.hatenablog.com

 

iDeCo加入 全会社員が可能に?

2019/7/29、次のような報道がありました。
若い方ほど、朗報です!

 

www.nikkei.com

 

f:id:Free_Spirit_19790714:20190731183822p:plain

 

報道記事の背景を説明します。

確定拠出年金(DC)制度[企業型DCと個人型DC]は2001年10月に始まりました(当時は「日本版401k」と呼ばれていました。もう少しで20年なんですね)。

企業型DCは、経営者にとってBS・PLへの予期せぬ影響がなく、運用リスクを従業員に移転できる仕組みであることから(「自己責任」「成果主義」というフレーズが流行した頃でした)、順調に普及が進み、加入者は今年3月末時点で約700万人とのことです(導入する会社は今でも増えています)。

一方、個人型DCはなかなか普及しませんでした。
iDeCoという愛称をつけ、2017年1月、「原則として」20~59歳なら誰でも利用できるよう加入者の範囲を拡大した結果、加入者は今年3月末時点で約120万人になったそうです(公務員をはじめ、勤務先に企業型DCなどの企業年金制度がある会社員、さらには専業主婦など国民年金第3号の人も加入できるようになりました)。

これまでの経緯は以上ですが、「20~59歳なら誰でも利用できる」制度にしては、企業型DCの700万人に対して、個人型DC(iDeCo)の120万人は少なすぎると思いませんか?

その理由は、上記の「原則として」にあります。

  • 「ただし、企業型DCの加入者は、規約で個人型DCへの同時加入を認められなければ(= 労使合意のもと、規約を変更しなければ)個人型DCには加入できない」という、厚生労働省が決めたルールがあります。

  • 経営者にとって企業型DCはおいしい制度(運用リスクを従業員に移転するので、決算への余計な心配がなくなる制度)ですので、決算への余計な心配がある厚生年金基金の廃止(代行返上)や確定給付企業年金(DB)の減額などを原資として、会社が負担するDCの掛金がそれなりに手厚く見えるよう、人事制度(給与体系や退職手当のルール)を再設計して企業型DCを導入してきました。
    2016年以前に企業型DCを導入した経営者と労働組合は、その後、iDeCoの存在を知った従業員から、「iDeCoにも入れるようにして欲しい」と言われることになります。
    しかしながら実際には、個人型DCへの同時加入を認める規約変更を行うには、労使合意のもと、会社が負担するDC掛金の上限を引き下げる方向の(退職手当を減らす方向の)人事制度変更が必要になります(そうなる会社が大部分だと思います)。
    これはかなりハードルが高い制度変更であり、従業員も、事情を理解できれば個人型DCへの同時加入を諦めるしかないでしょう。

この2つが組み合わさって、 「企業型DC加入者のほとんどの人は、個人型DCを併用できない」状況が続いてきたわけです(私もそうです)。

以上が、個人型DCの加入者が企業型DCより圧倒的に少ないままである理由だと思います(自営業など国民年金第1号の人や、勤務先に企業年金制度がない会社員は、2001年10月の時点で個人型DCに加入できたわけですから)。

 

実現したら、恩恵を受ける人とは?

2020年の通常国会に関連法の改正案提出をめざす。

ようですので、早ければ2021年ないし2022年の実現を期待できます。

その頃、60歳までにまだ年数のある企業型DC加入者の方が恩恵を受ける対象になります(若い方ほど恩恵を受けます)。

また、以前投稿した記事 のとおりに、個人型DCの加入資格年齢の上限が65歳に引き上げられれば、50代後半の企業型DC加入者の方も、個人型DCの併用を検討する価値は十分に出てくると思います。

 

freespirit1979.hatenablog.com

 


 

今回の報道のとおりに実質的な意味で個人型DCの加入者範囲がさらに広がるとしたら、個人型DCの運営管理機関選びは、これまで以上に重要になってきそうです。

運営機関の乗り換えも、テーマになるかもしれませんね。

 

DCの出口戦略を考えてみる②

確定拠出年金(DC)の出口戦略についての相談が増えてきました。

企業型DCで、従業員の入社時に遡って過去勤務期間分の退職金をDCに移行したケースでは、50代でDCの残高が1,000万円を上回っている方もいらっしゃいます。

額が額ですし、企業型DCは確定給付企業年金(DB)などと違って会社(や企業年金基金)が何もしてくれない完全自己責任の制度ですので、自分に合った、納得できる出口戦略を実行したいですよね。 

f:id:Free_Spirit_19790714:20190706104657p:plain

前回の記事:

freespirit1979.hatenablog.com


今回は、税金の影響について、年金で受け取る場合と一時金で受け取る場合を比較してみます。
 

 

1. 受け取り方

(2) 税金の影響を考える

① 年金で受け取る場合

i. 所得税

DCの年金は、各種手数料のほかに、所得税(7.6575%)が暫定的に差し引かれて(源泉徴収されて)振り込まれます。

DCの年金は、DBの年金や公的年金と同様、所得税法上「雑所得・総合課税」ですので、正確な(最終的な)所得税他の所得や各種の控除を加味して計算します。

具体的には、年が明けてからの確定申告で前年分の所得税を精算します(精算の結果、源泉徴収され過ぎた分があれば還付されます。確定申告しないと戻ってきません)。

ii. 住民税

確定申告の結果をもとに住民税が決定され、6月に通知されます(源泉徴収され過ぎた所得税があった場合、確定申告していないと住民税は本来よりも高く決定されます)。

② 一時金で受け取る場合

i. 所得税

DCの一時金は、各種手数料のほかに、所得税がかかる場合はそれも差し引かれて(源泉徴収されて)振り込まれます。

DCの一時金は、DBの一時金やその他の退職金と同様、所得税法上「退職所得・分離課税」ですので、所得税退職した年分の退職所得だけで計算します。

具体的には、一時金の請求後、所得税がかかるかどうかを運営管理機関が計算し、かかる場合のみ源泉徴収されて振り込まれます(一般的には源泉徴収で課税関係が終了し、確定申告する必要はありません)。

所得税がかかる人はそれほど多くはありません。

退職所得は永年の勤労に対する所得ということで、退職に起因する一時金にかかる税金は、勤続年数が長い人ほどできるだけかからないよう、非常に大きな非課税枠(退職所得控除額)が設けられているためです。

たとえば、退職時の勤続年数が38年の場合、退職所得控除額は2,060万円ですので、2,060万円までの一時金は非課税です。

一時金が退職所得控除額を超過してしまう場合でも、超過の全部ではなく半分に対して「所得税の税率」が適用されます(超過の半分は非課税です)。

計算式の原則は次のとおりです。

  • 収入金額 = DCの一時金 + DBの一時金 + その他の退職金
  • 退職所得 = (収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2
  • 所得税 = 退職所得 × 所得税率 - 控除額

詳しくは、国税庁HP「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」「No.2260 所得税の税率」をご覧ください。

www.nta.go.jp

www.nta.go.jp


ii. 住民税

所得税がかかる場合、一律10.0%の住民税も併せて源泉徴収されます(所得税がかからなければ住民税もかかりません)。

  • 住民税 = 退職所得 × 住民税率10.0% 

 


 


今回の(やや乱暴な)まとめ

  • 年金で受け取る場合の税金の影響は、2通りの考え方があります。

    • 源泉徴収される(暫定的な)所得税だけを考える
      源泉徴収税率は一律7.6575%なので、単純です]
    • 確定申告後の(最終的な)所得税と、それに応じて決定される住民税を併せて総合的に考える
      [複雑です。他の所得や家族状況などによって変動します]
  • 一時金で受け取る場合の税金の影響は、

    • 一時金を予想する(ただし、リスク資産が混じる場合、正確な予想は困難)
    • 退職予定時点の勤続年数をもとに、退職所得控除額を算出する
    • 「一時金 ≦ 退職所得控除額」なら税金はかからない
    • 「一時金 > 退職所得控除額」の場合、所得税・住民税を算出する

    というステップで比較的簡単に計算できます。 

 


 

近年の厚生労働省の調査結果にみられる「DCやDBでは、(おそらくは税金がかからないからという理由で)一時金で受け取る人が多い」という傾向に対し、私個人は、企業年金の実務経験上、次のように感じています。

  • せっかく終身年金を受け取れるにもかかわらず、目先の課税回避だけを優先して一時金を選択する残念な人が多すぎる
  • 金融リテラシーに自信がない人(下記★「おまけ」ご参照)は、一時金で受け取らないほうが安心なのでは? (余計なお世話ですが -笑)

 

次回は、「いつ(からいつまで)受け取るのか?」についてまとめてみます。

 


 

★ おまけ

金融リテラシークイズ(5問)

www.shiruporuto.jp

 

テレワーク・デイズ2019

「テレワーク・デイズ2019」が始まりましたね。

都内に通勤している方の中には、「今日(2019/7/22)からしばらく出社しない(出社できない)」という方も多いのではないでしょうか。

私の場合、会社よりもサテライトオフィスのほうが自宅からむしろ遠いので(苦笑)、テレワークはもっぱら自宅です。

 

2019/4/19 厚生労働省
「テレワーク・デイズ2019」参加登録の受付を開始します

 

f:id:Free_Spirit_19790714:20190722192412j:plain

 

今回はブログのテーマからはかなり遠い、軽い内容です(笑)。 

私自身はテレワークのいわば初心者ですが、何回か経験した感想は次のとおりです。

 

■テレワークのメリット

  • 痛勤時間がゼロ!
    (遠距離通勤者にとって、これは最高です)
  • 出勤前の身支度や帰宅後の着替えが不要!
    (ただし、ビデオ通話の呼び出しがないと信じられること -笑)
  • 「資料作成・執筆」や「講演の準備・練習」に最適
    (ただし、一人で過ごせること -笑)
  • 悪天候も電車遅延も関係なし
  • 会いたくない人に会わずに済む(笑)

 

■テレワークのデメリット

  • 当然ながら、来客に対応できない
    (来客が多い人には向かない)
  • ビデオ通話の環境はあるものの、重要な会議は難しい
    (通信がいつ途切れるかわからないし、参加者の感情を把握しづらい)
  • 紙の資料を必要とする、あるいはあったほうがはかどる作業の場合、資料の束をテレワーク前に自宅に持ち帰り、テレワーク後に会社に持っていく必要がある
    (ノートPCなどと一緒に持ち運ばざるを得ない場合、かなりの重さになる)
  • 自宅のテーブルや椅子がデスクワークに向いていないと、意外に疲れる
  • 業務上、テレワークできない人もいるので、全員共通の勤務形態にはなりえない

 

あまりいらっしゃらないとは思いますが、

  • デイトレードやゲームにハマッていて、ついついそちらに...
  • 小さい子どもがいて、ついついそちらに...

といった方は、実際には仕事にならないでしょうね(笑)。

 

国全体としては、どうなのでしょう。  

オリンピック・パラリンピックそのものは相当な経済効果があるのでしょうが、昨年からさらに拡大された今年のテレワーク・デイズは、日本経済、あるいは企業業績に短期的なマイナス影響を与えないのでしょうか? 

テレワーク・デイズの期間には様々な事象が国内外で発生するでしょうから、テレワーク・デイズが日本経済、あるいは企業業績に及ぼす影響の測定は困難でしょう。

でも、仮に影響がなかったとすると、テレワークはもっと推進されてもいいかもしれませんね。