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独立系FP 福嶋淳裕のブログ

iDeCo加入 全会社員が可能に?

2019/7/29、次のような報道がありました。
若い方ほど、朗報です!

 

www.nikkei.com

 

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報道記事の背景を説明します。

確定拠出年金(DC)制度[企業型DCと個人型DC]は2001年10月に始まりました(当時は「日本版401k」と呼ばれていました。もう少しで20年なんですね)。

企業型DCは、経営者にとってBS・PLへの予期せぬ影響がなく、運用リスクを従業員に移転できる仕組みであることから(「自己責任」「成果主義」というフレーズが流行した頃でした)、順調に普及が進み、加入者は今年3月末時点で約700万人とのことです(導入する会社は今でも増えています)。

一方、個人型DCはなかなか普及しませんでした。
iDeCoという愛称をつけ、2017年1月、「原則として」20~59歳なら誰でも利用できるよう加入者の範囲を拡大した結果、加入者は今年3月末時点で約120万人になったそうです(公務員をはじめ、勤務先に企業型DCなどの企業年金制度がある会社員、さらには専業主婦など国民年金第3号の人も加入できるようになりました)。

これまでの経緯は以上ですが、「20~59歳なら誰でも利用できる」制度にしては、企業型DCの700万人に対して、個人型DC(iDeCo)の120万人は少なすぎると思いませんか?

その理由は、上記の「原則として」にあります。

  • 「ただし、企業型DCの加入者は、規約で個人型DCへの同時加入を認められなければ(= 労使合意のもと、規約を変更しなければ)個人型DCには加入できない」という、厚生労働省が決めたルールがあります。

  • 経営者にとって企業型DCはおいしい制度(運用リスクを従業員に移転するので、決算への余計な心配がなくなる制度)ですので、決算への余計な心配がある厚生年金基金の廃止(代行返上)や確定給付企業年金(DB)の減額などを原資として、会社が負担するDCの掛金がそれなりに手厚く見えるよう、人事制度(給与体系や退職手当のルール)を再設計して企業型DCを導入してきました。
    2016年以前に企業型DCを導入した経営者と労働組合は、その後、iDeCoの存在を知った従業員から、「iDeCoにも入れるようにして欲しい」と言われることになります。
    しかしながら実際には、個人型DCへの同時加入を認める規約変更を行うには、労使合意のもと、会社が負担するDC掛金の上限を引き下げる方向の(退職手当を減らす方向の)人事制度変更が必要になります(そうなる会社が大部分だと思います)。
    これはかなりハードルが高い制度変更であり、従業員も、事情を理解できれば個人型DCへの同時加入を諦めるしかないでしょう。

この2つが組み合わさって、 「企業型DC加入者のほとんどの人は、個人型DCを併用できない」状況が続いてきたわけです(私もそうです)。

以上が、個人型DCの加入者が企業型DCより圧倒的に少ないままである理由だと思います(自営業など国民年金第1号の人や、勤務先に企業年金制度がない会社員は、2001年10月の時点で個人型DCに加入できたわけですから)。

 

実現したら、恩恵を受ける人とは?

2020年の通常国会に関連法の改正案提出をめざす。

ようですので、早ければ2021年ないし2022年の実現を期待できます。

その頃、60歳までにまだ年数のある企業型DC加入者の方が恩恵を受ける対象になります(若い方ほど恩恵を受けます)。

また、以前投稿した記事 のとおりに、個人型DCの加入資格年齢の上限が65歳に引き上げられれば、50代後半の企業型DC加入者の方も、個人型DCの併用を検討する価値は十分に出てくると思います。

 

freespirit1979.hatenablog.com

 


 

今回の報道のとおりに実質的な意味で個人型DCの加入者範囲がさらに広がるとしたら、個人型DCの運営管理機関選びは、これまで以上に重要になってきそうです。

運営機関の乗り換えも、テーマになるかもしれませんね。